官能小説 R-15 初めての雪
どうやら今日は今年初の氷点下らしい...
人の温もりを求めていたのはこの寒さの所為かもしれない...
暖房で暖まった自室と布団の恋しさを噛み締め、今日も玄関の扉を開ける。
万全な防寒対策ように見えるが首元だけは素肌を見せている。それは...
女「おはよ」
今俺に挨拶した女性にお願いされたからだ。
この女性は鈴村ほのか。年齢は俺の一個上で21歳。物静かで絵を描くのが好きだ。そして...俺の初めての彼女。
俺「...おはよ」
笑顔で挨拶を返す。
ほのか「じゅんちゃん、寝癖...」
むすっとした顔でこちらを見てくる。
ちなみに、じゅんちゃんとは俺のことである。本名は中嶋潤なので、みんなこう呼んでいる。
潤「あれ?直したつもりだったんだけど...」
ほのか「...何で?」
潤「え?水だけど...」
ほのか「ちゃんと寝癖直し使って」
潤「あー、そっか普通はそういうの使うもn...ハックション!!」
どうやら、いつも通り立ち話をしていたら、冷えてしまったらしい。
ほのか「あ、ごめん...首、寒いよね?待ってて、今出すから」
ほのかはそう言うと、リュックからマフラーを取り出した。明らかに市販で売っている物よりも大きい。
ほのか「一緒に巻こう?」
そう、お願いとは俺と一緒にマフラーを巻きたい。というものだ。
潤「ありがとう、でもやっぱりちょっと恥ずかしいな...ハハッ」
ほのか「約束...でしょ?」
そんな上目遣いをされたら断れる訳がない。
俺は152cmの彼女の身長に合わせて、腰を落とす。
潤「そ、そうだね...じゃあ、よろしく」
ほのかは小さな腕でマフラーを俺の首に回してくれた。
ほのかの匂いがする。甘くて良い匂いがする。
ほのか「できた...立っていいよ」
潤「ありがとう、あったかいね」
ほのか「ふふっ...」
この時、ほのかの顔が耳まで赤かったのは、恥ずかしがっていたからなのだろうか、それともこの寒さのせいだったのだろうか...」
いつも通りに何気ない会話を繰り広げる。徒歩10分の駅までの道のりも数分にに感じてしまう。この幸せをいつまでも噛み締めていたいと心の底から願う。
潤「そろそろ、B駅だね」
ほのか「うん、じゃあここでバイバイだね」
2人は大学が違うので、いつもここで別れる。俺の大学はB駅から徒歩5分のところに、ほのかの大学はB駅から2つ下ったC駅の近くにある。本当なら電車が来るギリギリまで待っていたいところだが、1コマがあるので、もうさよならをしなくてはいけない。
潤「じゃあ、また今夜」
今夜というのは、今日約束していたデートのことだ。それも付き合って半年の記念日デートだ。
ほのか「うん、楽しみにしてるから」
潤「7時にA駅に迎えに行くから」
A駅はB駅から3つ上った駅で、ショッピング街やカフェ通りが数多く並んでいる。いわば、大学生ご用達のスポットだ。
ほのか「わかった、ありがとう...」
そう言いながら、マフラーをほどき、彼女は駅へと向かって行く。
ほのか「・・・・」
いつもほのかは別れ際に何か言うのだが、聞き取れない。本人に聞いても教えてくれないので、今日も聴こえているフリだけする。
微かに首回りに残った君の香りを嗅ぎながら、ほのかを見送った。
ほのかの小さい背中が更に小さくなる。少し寂しい気持ちにな...
「よぉ!」
後ろから声が聞こえる。振り向くと友人の流鏑馬(やぶさめ)大也がいた。
大也「朝からお熱いなぁ〜、外はこんなに寒いのにぃ!」
潤「...うぜぇ」
大也「挨拶より先に罵倒なんて、大也興奮しちゃう〜///」
潤「...」
俺は一人で興奮しているこの変態を置いて、すぐそこのキャンパスに向かう。これでも大学で唯一の友達なので、大事にしている方だ。
大也「あぁ///放置プレイとか鬼畜すぎちゃうぅぅぅ///」
やっぱり、野晒しにはしておけない。
潤「分かったから来い」
大也「あはんっ///強引///でも、大也そういうの好きかもぉ///」
潤「うるさい」
大也「首元寒そうだねぇ!私と一緒にマフラー巻かない?///」
話を聞いてはくれない...と呆れていたら、ポケットに重さを感じた。
大也「ちゃんと避妊はしろよ」
そういいながら、大也は先に言ってしまった。呼び止めようとも思ったが、いつのまにか大学に着いていたので、大声を出すのが恥ずかしく、口をつぐんだ。
ポケットに入っていたものは
\超極薄!0.02mm/
怒りを通り越して、呆れた。
潤「俺たちはまだそういう関係じゃねぇよ...」
大也の後を追うようにトボトボと歩く上から白銀の妖精がふわふわと落ちてきた。
潤「雪...か...」
思わず幻想的な綺麗さに見惚れてしまった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
講義がすべて終わり、待ち合わせのA駅に到着した。
時計は6時45分を差している。
潤「そういえば、この時計を持つようになったのも、ほのかのおかげだな」
今朝降り出した雪がまだ降っている。今日は一日中、雪が降っていたようだ。おかげで朝は黒いコンクリートだった地面が常夜灯で乱反射している。
ピロン♪
再び見惚れていた俺だったが、携帯の着信音で現実に引き戻された。ほのかからだ。
「ごめん🙏電車停まっちゃった!💦間に合わないかも。゚(゚´Д`゚)゚。」
とのことらしい。きっと原因はこの雪だろう。
「大丈夫だよ!コンビニで時間潰してるから、着きそうになったら連絡頂戴!( ̄^ ̄)ゞ」
彼女に気を遣わせないように、このような返信をしたが、駅から動くつもりは微塵もない。一秒でも速くほのかに会いたい気持ちが俺を駅から離そうとしない。
ピロン♪
数秒後に返信がきた。
「ありがとう」と書かれたやる気の無いクマのスタンプが送られてきた。
これは彼女が好きなキャラクターなのだ。
俺も同じキャラクターのスタンプで「ワクワク」と書かれたスタンプを送る。
送ってから、ちょっと気持ち悪かったかなと思った。らしく無いことをするほど俺の心は浮かれているらしい。
18時58分
電車が停まる音がした。
と同時に、ほのかから連絡がきた。
「もうすぐ着く!😆コンビニに迎えに行くね!」
返信しようと思ったら、駆け足で改札に向かってくるほのかの姿が見えた。ほのかが駆け足なんて珍しいとも思ったが、きっと俺と同じで浮かれているのだろうと想像したら、嬉しくなった。
ほのかも俺を見つけたみたいだ。さらに急いで、駅員に定期券を見せ、こちらに駆け寄ってくる。
潤「可愛い...」
思わず呟いてしまった。
ほのか「ごめん...お待たせ...いつから外出てた?コンビニであったまってて良かったのに...」
潤「ついさっきだよ。そろそろ7時になるから出ておこうかなぁって思ったから。迎えに来ようとしてくれてありがとうね」
ギュッ
ほのかが俺の手袋を取って、手を握ってきた。
ほのか「...嘘つき、こんなに冷たい」
全くもってほのかには敵わない。
潤「ごめんごめん、早く会いたかったから、つい...ね」
ほのか「元気な君が一番だからあんまり体に悪いことはしないで...マフラー早く巻いて」
潤「ありがと、心配してくれて」
今朝と同じように俺の首に巻いてくれる。
やっぱり、ほのかのいい匂いがする。
ほのか「じゅんちゃん...スケベ...」
潤「え!?」
ほのか「あんまりクンクンしないで、恥ずかしい...」
潤「あ、えっと、ごめん!いやそのぉ、いい匂いだったからつい...アハハ」
バフっ!
ほのかが急に抱きついてきた。
ほのか「じゃあ、これでおあいこだね、ヘヘっ///」
上目遣いでこちらを見てくる。どうやら、匂いを嗅いでいたらしい。全ての行動が可愛すぎて、抱きしめたくなった。ただ、それではデートにならない。
潤「ふふっ...とりあえず、ご飯食べに行こうか」
欲に打ち勝ち、デートを始めようとすると...
ほのか「あ、待って、携帯の電源切るから」
潤「あ、忘れてた、ありがと」
このデート前に携帯の電源を切るというのは初デートでほのかがやっていたのを俺も真似るようになったのだ。ほのかが言うには、「誰にもデートを邪魔されたくないから...」とのことらしい。いつのまにかデートをするときの2人のルールとなっていた。俺が腕時計を着けるようになったのも、デート中に時間を確認できるようにするためだ。
こうして、オシャレなカフェでディナーを楽しみ、映画を観に行った。カフェも映画も気に入ってくれた。予定よりも時間は押してしまったが、それ以外はとても順調であっという間に時間が過ぎていき、すでに時計は11時半を差そうとしていた。
潤「いやぁ〜、映画面白かったね。特に最初に助けた男の子が恋のキューピットだったっていう伏線を最後に回収したのがすごい良かったよね!」
ほのか「...うん」
いつもはぼーっとしていて、何を考えているか分からないような表情をしているほのかが、珍しく難しい顔をしていた。今日はいろんなほのかが見れて嬉しい反面、彼氏としては不安な気持ちにもなる。
潤「映画面白くなかった?」
映画にかなり感情移入していたほのかがそんなはずは無いと思ったが、心当たりがなかったので、聞いてみた。
ほのか「ううん!すごい、面白かった...よ」
潤「なんか、悩み事でもあるの?」
直接聞いてしまった。女の子は男の方から悩みに気付いてあげなけゃいけないのに!
ほのか「...終電、ない」
潤「え!うそ!?」
おかしい。まだ11時43分の終電まで20分はある。ここからA駅までは徒歩10分もあれば着く。それなのに...
ほのか「今日車両点検が入るから、終電は一本早いって、来るとき言ってた...」
デートに浮かれていて駅内放送を全く聞いてなかったようだ。こんなことなら、ちゃんと駅情報をチェックしておくべきだった。
潤「もう遅いしな...とりあえず...」
と戸惑っていると、
ほのか「あそこ...泊まろ...」
ほのかはホテルの方向を指差していた。確かに家までは距離があるし、ここら辺で始発まで待つしかかない。
潤「そうだね...本当にごめんね!」
ほのか「...大丈夫、君と一緒にいる時間が増えて、私...嬉しい...///」
潤「...っ!...ありがと///」
そう、この時はほのかの優しさと謝罪の気持ちで全く気づいていなかったのだ。向かおうとしているホテルがラブホだと言うことに。
10分ほど歩いて、やっとホテルに着いた。普段なら絶対に泊まらないほど値段の高いホテルだったが、これ以上ほのかを歩かせるわけにもいかない。
「来月からは節制を心がけよう...」そう思いながら、ホテルのオーナーの所に行く。
潤「すみません。この時間からでも空いてる部屋ってありますか?」
オーナー「少々お待ちください。ただ今空室の確認をします。」
そう言うと、オーナーさんは目の前のパソコンをカタカタと操作する。そもそも、今からでもチェックインって可能なのか?慌てていて全く気づかなかったが、「普通はこの時間からは泊まらないよな...」と考えていると。
オーナー「503号室が空いてます。そこでよろしいでしょうか?」
おぉ!泊まれる!良かった。危うく別に泊まれる所を探しに歩く所だった。ほのかのことはもちろんだが、俺も今日はたくさん歩いて疲れているのだ。休めることなら、いち早く休みたい。
潤「ありがとうございます!いやぁ、今日終電一本早くなr「ありがとうこざいます」
俺が事情を説明しようとしているとほのかが被せてきた。それどころか、俺の腕を引っ張り、早足でエレベーターの中に乗り込んだ。
潤「ごめん、疲れてたよね...」
「でも、こんなに急いでるのも珍しいよね」とまでは言わなかった。ほのかから"察して"のオーラが出ていたからである。
ほのかが5階に行くボタンを押すと、俺の腕を離した。
ほのか「いや...こっちこそ急にごめんなさい...」
エレベーターの中に若干の緊張感が走る。
その所為か、5階まで上がる時間がやけに長く感じた。
チーン♪
ようやく、5階に到着したようだ
エレベーターから降りるとすぐに目的地の503号室を見つけた。
潤「...ここだね、入ろっか」
雰囲気を和ませようと笑顔で話しかけるが...
ほのか「..........」
無言で目を逸らされてしまった。
仕方なく部屋に入ると、あたり一面がピンクのパステルカラーで覆われていた。
潤「なっ...!」
思わず声が出る。ここでようやく理解した。ここが邪なことをするどすけべホテルだということに!
ほのか「先にシャワー、浴びていい?」
ほのかは全く気にしている様子はない。俺だけがムッツリスケベみたいで恥ずかしくなった。
潤「あ、あぁ...お先に...どうぞ...」
ほのか「...ありがと」
明らかに動揺している。一旦冷静になろうと深呼吸をしながら、ベットに腰を落とす。
すでに確認済みのメールを意味もなく、何度も見ている。
心と身体の調和が取れていない。ほのかがシャワーを終えるまでには、いつも通りのコンディションにしておきたい。
潤「...ほのかは、俺とSEXしたいのかなぁ...」
思わず小声で呟いた。
それと同時くらいにほのかがシャワールームから出てきた。
ほのか「今上がったから、次いいよ...」
ホテル特有の寝巻きから、官能的な大腿部がチラチラ見える。それに加えて、今の発言が聞かれたのではないかという焦りの所為で、正常に戻ろうとしていた心拍数が再加速する。
潤「...わ、分かった、今入るよ」
心拍数の所為か、シャワールームまで向かう足が速い。
急いでシャワーを浴び、気持ちを落ち着ける。疲れた身体にシャワーが沁みる。不思議と心にも余裕が出てきた。
潤「...落ち着こう。今日はこのまま寝よう。SEXは俺がほのかを養えるようになってからだ。」
そう自分に言い聞かせる。
そして、滝に打たれる修行僧のように、シャワーを浴び、心頭滅却する。